首の痛みや不調の原因には様々な理由が考えられます。何かしらの病気やケガの影響、姿勢からの影響などです。 ここでは比較的多くみられる症例であるむちうち、ヘルニア、頸椎症、寝違えについて紹介したいと思います。
- 直接痛みの原因になるもの:むちうち、ヘルニア、頸椎症、寝違え
- 放っておくと痛みや不調につながるもの:むちうり、ヘルニア、頸椎症、寝違え ・シビレを引き起こすもの:むちうち、ヘルニア、頸椎症
むちうち(頸椎捻挫、外傷性頸部症候群)
身体に何らかの衝撃が加わることにより首がしなり、筋肉や靭帯、椎間板などの関節組織が損傷することをいいます。 交通事故や転倒、転落などの事故によるものが多いですが、ラグビーやアメリカンフットボール、柔道やレスリングなどのコ ンタクトスポーツ、スキーやスノーボード、 自転車競技やモータースポーツなどの急速な加速と減速や転倒の危険を伴う競技でも発生します。また、自動車事故における 損傷を“むちうち症”ということが多いです。
症状
事故やアクシデント直後から首に痛み、違和感を訴える方もいますが、当日よりも翌日や数日後に強い首の痛みや頭痛などを 感じることが多いです。 首が動きにくくなり、回りにくかったり上や下を向きにくかったりと可動域に制限が出ることもあります。損傷の程度によっ ては肩や手にしびれが生じたり、めまいや耳鳴り、吐き気などの症状が出ることもあります。むちうちは後遺症が残りやすい のも有名なので、損傷直後からしっかりと治療を受けて早期に症状を改善しておきましょう。
自分でできる対処法
受傷直後は身体に無理をかけないように頸椎カラーなどを使用して安静にすることが必要ですが、近年では長期間の安静は症状の改善に悪影響をもたらすといわれています。痛みの強いうちは絶対安静が良いですが、痛みが落ち着いてきて首が動かせるようになるとストレッチやトレーニングを行ってみましょう。 ここでは首周辺のストレッチをいくつか紹介したいと思います。
首の側面のストレッチ
椅子に座り、右手を腰の後ろに回します。左手の中指が右耳の前にくるように頭を持ち、首を左に回して左斜め後ろに反らすように左手で引きましょう。左右ともに20~30秒行います。
首と肩のストレッチ
椅子に座り、右手は腰の後ろに回します。左手の中指が右耳の上にくるように頭を保持しましょう。 頸を左に傾けるように左手で引っ張ります。左右ともに20~30秒行います。
当院でおこなう対応例
クライオセラピー
-30℃の冷気で患部を冷やし、組織の損傷による炎症を抑えることで、鎮痛効果が期待できます。
マイクロカレント療法
体が傷を治す時に発生させる損傷電流というものに近い電流を体の外から当てることにより、細胞の活性を促し、早期の改善につながります。
頸椎のアライメント調整
損傷時の諸撃や筋肉のバランスによって首の骨に生じた歪みを整えます。
トレーニング指導
安静によって弱ってしまった筋肉をゴムバンドやダンベルなどを使って鍛える手助けをします。
手術を検討する場合
- 骨折や脱臼を伴っている場合
-
脳脊髄液減少症が合併している場合
など
頸椎椎間板ヘルニア
長年にわたる首への負荷の蓄積や加齢による水分量の減少に伴い、椎間板の外縁に亀裂が生じてそこから髄核という組織が飛び出すと神経や脊髄を圧迫します。 それに伴って様々な症状を引き起こすことをヘルニアといいます。
30~50歳代の男性に多くみられます。レントゲン検査でもわかることもありますが、MRIで検査する方が確実に病態を把握できます。
症状
軽度の場合:後頭部や首から肩甲骨にかけての痛みやしびれを感じたり、首の運動制限が生じます。
中等症の場合:ではヘルニアが神経を圧迫する事で痛みやしびれが腕の方にまで生じます。筋肉の痙れんや筋力低下を引き起こすこともあります。
重度の場合:ヘルニアが脊髄を圧迫する事で、手の指が上手く動かなくなったり両方の腕や手全体にしびれが生じます。 場合によっては体幹部や足の方にも症状が現れます。さらに進行すると小便や大便などの異常が生じることもあります。
軽度の状態
軽度のものでは、髄核が変形して背骨をつなぐ靭帯を圧迫するため、後頭部や首から肩にかけての 違和感、痛みが主な症状です。痛みがあるので首を動かせる範囲が狭くなります。
中等度の状態
中等度のものでは髄核が椎間板から飛び出して神経の根っこを圧迫します。そのため痛みは強く、肩から腕の方まで広範囲に感じます。さらにしびれや筋肉のけいれん、筋力低下などを引き起こします。
重度の状態
重度のものでは髄核が椎間板から飛び出して脊髄を圧迫します。そのため、痛みやしびれは非常に強く、肩から腕の方まで広範囲に感じます。手の指が上手に動かなかったり両方の手が全体にしびれます。場合によっては体幹部や足にも症状が現れます。
さらに進行すると小便や大便にも異常を生ずることがあります。
対処法
軽度や中等症のものでは頸椎カラーなどを利用して2ヶ月程度安静を保つことで軽快することもあるので首に負担をかけるような行為は避けましょう。しびれや痛みが強い場合やしびれを両腕に感じたり、小便などの感覚がわかりにくい場合には専門の医療機関を受診しましょう。
軽度のもので経過観察をしている場合は、ストレッチやトレーニングを行うことで肩や首に感じるコリは少し楽になるので、簡単なものをいくつか紹介したいと思います。
①首と肩のストレッチ(僧帽筋)
椅子に座り、右手は腰の後ろに回します。左手の中指が右耳の後ろにくるように頭を持ちます。 首を左に傾けるように左手で頭を引っ張りましょう。左右ともに20〜30秒かけてゆっくり 伸ばしましょう。
②首と肩のストレッチ
椅子に座り、右手を太ももの上に置きます。左手の小指が右耳の後ろにくるように頭を持ち、首を少し左に回して左斜め下を向くように左手で引っ張りましょう。左右ともに20〜30秒ゆっくり伸ばしましょう。
朝と夜の2回に分けて、それぞれのストレッチを2〜3セット行うとより効果的です。ここで紹介したものは少しでも症状を和らげるためのものであり、全員に効果があるとは限りません。また、ストレッチをすることで痛みやしびれが強くなる場合は行わないようにしてください。
当院でできる対処法
①ハイボルテージ療法
特別な波形を利用した電気治療器で筋肉や神経にアプローチすることで高い鎮痛効果が期待できます。
②クライオセラピー
-30℃の冷気で患部を冷やし、炎症や神経の興奮を抑えて痛みを和らげます。
③超音波治療器
1秒間に数百万回振動する超音波を利用して硬くなった組織を叩きほぐします。さらに、鎮痛効果や組織の修復を促す効果も期待できます。
④カッピング
毛細血管の量が少なく、血液が滞って老廃物の除去ができない状態を解放します。また、筋膜の滑走性を高める効果も期待できます。
手術を検討する場合
- 両手がしびれている場合
- 手が思うように動かせなくなった場合
- 足や体幹部にも症状が出てきた場合
- 小便や大便に異常を来した場合
- その他、当院で対応しきれない状態のものは整形外科などの専門医をご紹介させていただきます。
頸椎神経根症
首の神経は脊髄から出て上下の骨の間を通って走行し、筋肉や皮膚など体の様々なところに分布しています。神経が骨と骨の間を抜けるところを神経根といいます。そこが何かしらの原因で圧迫されることにより痛みやしびれ、腕や手の運動障害が生じます。このことを頸椎神経根症といいます。神経を圧迫する原因は骨の変形やズレ、ヘルニアなどがあります。
症状
多くは左右どちらかの腕や手に痛みやしびれが生じます。また、上を向くと神経の圧迫が強まることが多く、上を向いた時に痛みやしびれが強くなる方は要注意です。進行すると手の感覚が鈍くなったり圧迫された神経が分布する筋肉が萎縮することもあります。
対処法
初期の頃は頸椎カラーなどを使用して首に負担がかかることを避けましょう。 特に上を向いたり首を傾けたりして症状が強くなる場合はその動きをなるべくしないよう心がけましょう。 特にしびれが生じている場合は専門の医療機関でレントゲンなどの検査を受けましょう。
症状が落ち着いてくると、首のストレッチやトレーニングなどを行うと悪化の予防につながります。ここでは簡単なストレッチを紹介します。
首の後ろのストレッチ
椅子などに浅めに座って頭の後ろで両手を組みます。両手で頭を引っ張って下を向き、左のふとももの外側をみるように首を回してストレッチをします。 この時に首の後ろから背中にかけて筋肉が伸びているか意識しましょう。左右ともに20〜30秒かけてゆっくりと伸ばしましょう。
首と肩のストレッチ
椅子に座り、右手はふとももの上に置きます。左手の小指が右耳の後ろにくるように頭を持ち、首を少し左に回して左斜め下に傾けるように左手で引きましょう。この時に首の後ろから肩甲骨にかけて筋肉が伸びているか意識しましょう。左右ともに20〜30秒かけてゆっくりと伸ばしましょう。
手術の適応を考える場合
- しびれや痛みが非常に強く、日常生活に支障をきたす場合
- 手に力が入らなくなってしまった場合
寝違え
一般に、寝起きに首から肩甲骨の辺りに痛みが生じて首が回せなくなったり、上や下を向けなくなったりする状態をいいます。特に、疲れていてソファやこたつでひと眠りしてしまった時や、変な格好で寝てしまった時に発生しやすいです。就寝の他にもデスクワークや運転での長時間にわたる同一姿勢、猫背やストレートネックなどの首に負担のかかる不良姿勢、 力仕事による疲労の蓄積や寒冷にさらされて筋肉が硬くなった後に何気なく首や肩を動かして、筋肉や靭帯に小さな亀裂が生じて炎症生の痛みが発生すると考えられます。
症状
主には首の運動制限と肩や肩甲骨にかけての痛みです。特に首を回したり上を向く動作が制限されることが多いです。痛む場所は首の後ろや側面、肩甲骨の周辺に感じることが多く、触れてみるとビー玉くらいの大きさのしこりを感じることもあります。
対処法
基本的に数日~数週間で自然に回復しますが、2〜3日経っても痛みが変わらないまたは強くなっている場合には関節や筋肉に炎症が起きている可能性があります。場合によっては痛みが数ヶ月続くこともあるので、よくあることだと考えずに、痛みが出た際にはまず痛みを感じるところを冷やしてあげましょう。痛みが落ち着いてくればストレッチなどを行うと筋肉も柔らかくなり、再発を防げます。今回紹介するストレッチは寝違えの予防にもつながるので、 普段からたまに寝違えるという方もやってきて下さい。
首の側面のストレッチ
椅子に座り、右手を腰の後ろに回します。左手の中指が右耳の前にくるように頭を持ち、 首を左に回して左斜め後ろに反らすように左手で引きましょう。左右ともに20〜30秒行います。
首と肩のストレッチ
椅子に座り、右手はふとももの上に置きます。左手の小指が右耳の後ろにくるように頭を持ち、首を少し左に回して左斜め下に傾けるように左手で引きましょう。左右ともに20〜30秒行います。
当院で行う対処例
ハイボルテージ療法
身体の深部まで到達する特殊な電気治療機を使用して緊張した筋肉を柔らかくして早く痛みを鎮めます。
肩甲骨モビライゼーション
寝違えの場合は首のみでなく肩甲骨周辺の筋肉が硬くなって痛みが生じることが多いので、肩甲骨の動きを良くします。
カッピング ・テーピング
首と肩甲骨周辺の血流を良くします。 動きの悪くなった筋肉を動きやすくします。