痛み

手首、指の痛み〜原因と対処法〜

手首や指の痛みは原因となる疾患が非常に多く、痛む場所も全く異なったり同じ場所が痛くても原因は違う疾患だったりと判別が難しいのが特徴です。ここでは比較的多くみられる疾患をピックアップして説明したいと思います。


腱鞘炎(ド・ケルバン病)

腱鞘とは、腱を囲む筒のようなもので、骨などの硬い組織と腱が擦れるのを防ぐ役割をします。
度重なる運動によって腱が疲労して炎症が起きると、腱や腱鞘が腫れて膨らんだようになり、痛みを生じます。この状態を腱鞘炎といいます。
手首や肘、アキレス腱部で良く発生しますが、中でも手の親指から手首にかけて痛みを生じる腱鞘炎をドケルバン病といい、40〜50歳代の女性に好発します。その理由ははっきりとわかっていませんが、家事による手首の使い傷めやホルモンバランスの影響が考えられます。

症状

手首や親指を動かすと手首に痛みを感じます。軽い炎症の場合は手首の親指側を押すと痛みが出たり、ひどい場合は手首が腫れてしまったりします。また、親指を他の指で握って握り拳を作り、手首を小指側に曲げると強い痛みを生じます。この場合はドケルバン病変を疑います。

指で物をつまんだり、ドアノブを回すなどの細い動きや捻れを伴う動きで痛みを感じます。

自分で出来る対処法

手首を動かさなくても痛い場合や腫れを認める場合はアイシングをした上でサポーターやテーピングで手首を固定し、安静にする事が大切です。この時期に放っておくと慢性的に痛みを感じやすくなってしまいます。
症状の軽いものではストレッチやセルフマッサージで痛みが和らぐこともあるので少し紹介したいと思います。

前腕のストレッチ①

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を下にしておきます。反対の手で手の甲を掴み、親指を外に回して手の平が自分の方に向かうように引っ張りましょう。20〜30秒かけてゆっくりと伸ばしましょう。

前腕のストレッチ②

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を上にしておきます。反対の手で手の平を掴み、小指を内に回して手の甲が自分の方に向かうように引っ張りましょう。20〜30秒かけてゆっくり伸ばしましょう。

手根管症候群

手根管とは、手の平の骨と筋肉を束ねる帯のようなものに挟まれた場所のことをいいます。この場所は手首や指を曲げる筋肉のほか、血管や神経も走行します。農家や縫製職などの手をよく使う方に発生しやすく、特に40代以降の女性で多くみられます。その他にも、骨折後の骨の変形や関節リウマチ、妊娠や出産、腎不全による人工透析などが原因になることもあります。

症状

手首や親指、人差し指、中指、薬指の一部または全体に痛みやしびれ、違和感などを訴える方が多いです。特に寝起きや就寝時に症状を強く感じます。
進行すると親指の下の盛り上がりが小さくなって親指と他の指で丸を作ろうとしても上手に出来なくなったり、物をつまむ動作がしにくくなったりします。手首の手のひら側を叩いてみたり、手のひらを合わせて合掌のポーズをしたり手の甲同士を合わせて手首を曲げると指先にピリッとした痛みを感じる場合は手根管症候群を疑います。

チネル兆候 ファレンテスト OKサインテスト

自分で出来る対処法

まずは手首に負担をかける動作を避けましょう。重い物を持ったり引っ張ったりする動作はもちろん、野球やテニスなどの手首を曲げ伸ばしすることが多いスポーツも控えましょう。
手根管の中を通っている腱が疲労によって腫れ、神経を圧迫している場合はサポーターやテーピングを使って手首を安静に保つと改善される場合もありますが、神経自体や全身的な疾患が原因になっている場合は症状が強くなる場合もあるので、早めに専門の医療機関に行くようにしてください。ここでは症状が軽い方に向けたストレッチを紹介します。

前腕のストレッチ①

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を上にしておきましょう。反対の手で手の平の指の付け根辺りを押さえ、手の甲が真っすぐ自分の方に向かうように引っ張りましょう。20〜30秒かけてゆっくり伸ばしましょう。

前腕のストレッチ②

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を上にしておきましょう。反対の手で手の平側の指先に近いところを押さえ、手の甲が真っすぐ自分の方に向かうように引っ張りましょう。20〜30秒かけてゆっくり伸ばしましょう。

手術を検討する場合

  • 6ヶ月以上経過しても痛みやシビレが段々とひどくなる場合
  • 物をつまんだり字を書くといった細かい動きが出来なくなった場合

など

TFCC損傷(尺骨突き上げ症候群)

手首の関節は親指側と小指側の2つに分かれています。小指側の関節は親指側より骨と骨の間が開いているので、軟骨や靭帯などにより補強されています。この構造体を三角線維軟骨複合体(TFCC)といいます。

TFCCは手をついてこけたときや手を捻った時に損傷しやすく、体操選手やバスケット選手、ゴルファー、大工や左官職人などの手首に負担のかかるスポーツや仕事をされている人に多く発生します。手を突いた記憶などがなくとも度重なる衝撃が蓄積して損傷することもあり、これを尺骨突き上げ症候群とよぶこともあります。

症状

手首の小指側の痛みが主です。押すと痛かったり手首を動かすと痛みが出るので運動制限が起きることもあります。たったり座ったりする時に手で体重を支えるときやペットボトルの蓋を開けるような手首を回す動作で痛かったりと日常の何気ない動作でも痛みを感じる事があります。

自分で出来る対処法

痛みが強い時はアイシングとサポーターやテーピングで固定することで手首に負担がかからないようにすることが大切です。4〜12週間ほど手首に負荷をかけないように過ごすと自然に痛みが引いていく事が多いですが、無理をしてスポーツや力仕事をしてしまうとTFCCのみならず周辺の組織も損傷してしまって慢性的に痛みを感じるようになってしまうので注意してください。
ここでは自分で出来るテーピング法について紹介したいと思います。

手首の小指側にある骨の出っ張りを手の平側へ押し込みながらテープを少し引っ張って手首に巻き付けます。この時、手はパーの状態にしておいてください。次に今貼ったテープに1/2〜1/3を重ねて上下に2本を同様に貼ります。


ギヨン管症候群

ギヨン管とは、手の平の骨と骨をつなぐ靭帯に囲まれた場所のことをいいます。場所は手首の小指側で、尺骨神経が通過します。ガングリオンという脂肪の塊が出来やすい部分でもあり、それに神経が圧迫されることで症状が起きることが多いですが、手をついてこけたときや長時間のサイクリングによる手首の圧迫が引き金になることもあります。また、麺打ち職人や畳職人などの手首に負担のかかる職業でも見受けられます。

症状

手首の小指側や薬指、小指の一部または全体に痛みやしびれ、違和感などを訴える方が多いです。進行すると小指の下の盛り上がりが小さくなり、親指と小指で丸を作ろうとしても上手に出来なくなったり、物をつまむ動作がしにくくなったりします。特に手刀のように指を伸ばした状態で親指と人差し指の間に紙を挟んでも力が入らないので引っ張られると抜けてしまいます。

指の変形 フローマン兆候

自分で出来る対処法

まずは手首に負担をかける動作を避けましょう。重い物を持ったり引っ張ったりする動作はもちろん、野球やテニスなどの手首を曲げ伸ばしすることが多いスポーツも控えましょう。
手首を安静に保つと数ヶ月で回復する場合もありますが、神経自体や靭帯の癒着が原因になっている場合は症状が強くなる場合もあるので、早めに専門の医療機関に行くようにしてください。ここでは症状が軽い方に向けたストレッチの方法を紹介します。

前腕のストレッチ①

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を上にしておきます。反対の手で手の甲を掴み、小指を外に回して手の平が外の方に向かうように手首を曲げます。20〜30秒かけてゆっくり伸ばしましょう。

前腕のストレッチ②

伸ばしたい方の肘をまっすぐ伸ばし、手の平を下にして軽く指を握っておく。反対の手で包むように握り、親指を内に回して手の甲が自分の方に向かうように引っ張りましょう。20〜30秒かけてゆっくり伸ばしましょう。


ばね指(弾発指、ばち指)

腱鞘とは、腱を囲む筒のようなもので、骨などの硬い組織と腱が擦れるのを防ぐ役割をします。
度重なる運動によって腱が疲労して炎症が起きると、腱や腱鞘が腫れて膨らんだようになり、痛みを生じます。この状態を腱鞘炎といいます。これがさらに悪化すると、腱鞘を通る腱が膨れて腱鞘を通りにくくなたり通れなくなったりします。この時に指を曲げるとバチッと音がしたり指が伸びなくなったりする状態をバネ指といいます。

手の親指に最も多く発生し、次いで中指、薬指と続きます。40〜50歳代の女性に好発します。その他、指に力を入れて行う仕事の多い方は年齢や性別に関係なく発生します。

 

症状

初期は指を動かした時に違和感や痛みを感じるくらいです。進行すると指の付け根が痛くなったり、指を曲げ伸ばしする動作がスムーズに出来ず、途中で引っ掛かるようになります。特に指が曲がってしまって中々伸びなくなることが多いです。

自分で出来る対処法

初期の頃に気付いた場合はなるべく指を使う動作を避けて安静にする事が大切です。この時期に指を使いすぎると腱が肥厚して腱鞘に引っ掛かるようになり指が動かしにくくなります。
症状の軽いものではセルフマッサージで症状が和らぐこともあるので少し紹介したいと思います。
まずは手首のマッサージからです。手首の手の平側を真ん中、親指側、小指側の3点に分けて反対側の手の親指を使って押さえ、円を描くようにマッサージしましょう。次に親指と小指の下の膨らんでいるところをマッサージしましょう。最後に指の付け根辺りを押していって痛むところをマッサージしましょう。


突き指(槌指、マレットフィンガー)

野球やバレーボール、バスケットボールなどの球技中に指先にボールが当たって指が強制的に曲げられた時に発生する腱や靭帯の損傷の総称です。

軽いもので、腱が炎症を起こしたり部分的に損傷している場合は適切に処置を行えば元のようになりますが、接触の力が強かった場合は腱が断裂してしまったり、脱臼や骨折を合併することもあります。この場合は単なる突き指ではなく、マレットフィンガーといわれます。腱の完全断裂があった場合は指が曲がったままになるので注意が必要です。

症状

指の第1関節に痛みや腫れがあり、曲げ伸ばしがしにくくなります。特に伸ばすことが出来ない場合は要注意です。突き指をした周辺が青黒くパンパンに腫れてくたときは骨折なども疑いましょう。

自分で出来る対処法

腱の炎症や部分的な損傷では受傷直後にアイシングを行い、装具やテーピングによって固定をして指を安静にすることで数日から数週間のうちに腫れも痛みもなくなります。突き指という名前につられて指を引っ張ると悪化することがあるのでやめてください。部分的に断裂していると疑われる場合には指を反らして固定できる特殊な装具を使用して固定することで6〜8週間のうちに腱が再生してくれます。指を伸ばそうとしても全く伸びない場合は腱の完全断裂や脱臼、骨折の疑いがあり、早急に専門の医療機関に行きましょう。

ここでは簡易的なテーピングを紹介します。
用意するもの 幅が1cm程度の伸びないテーピング
①突き指をして痛む指を無理のない程度に伸ばして、腫れている関節を挟むように上下にテーピングを巻きます。
②次に指の甲側(指を曲げると痛い場合)または手の平側(指を伸ばすと痛い場合)に①で巻いたテープを結ぶように真っ直ぐ貼ります。さらこの上にXになるように2本貼り着けます。
③①で巻いたテープと同じように指に1周テープをテープを巻いて②の段端を補強します。
④隣り合う突き指をしていない指を添え木代わりにしてテープで1周巻いて完成です。

テープを巻いた後の注意点

テープを巻く力が強すぎると指が紫色になる場合があります。そんな時はすぐにテープを外しましょう。指に巻き付けるテープは最低限の強さで、巻いた後に爪を押して爪のしたの皮膚が白からピンク色にさっと戻るか確認しましょう。

手術を検討する場合

  • 指が全く伸びない場合
  • 数ヶ月経過しても指が曲がったままの場合

など

へバーデン結節、ブシャール結節

変形性関節症の1種で、指の第1関節が変形するものをへバーデン結節、第2関節が変形するものをブシャール結節といいます。関節の真ん中を挟むように内側と外側にコブが出来るのが特徴的です。

手指が変形する代表的な疾患に関節リウマチがありますが、リウマチでは指の関節の変形よりも手首や指の付け根の関節の変形が起こることが多いです。ただし第2関節に影響を及ぼすことも確認されています。

原因

はっきりとした原因は解明されていません。しかし、40歳代以降の女性に多く発生するため女性ホルモンとの関連や、家事や楽器の演奏などの手先を良く動かすことの影響があると考えられています。また、当院に来られた患者さんと話をしていると、母や祖母の手が同じようになっていたという方が多く、遺伝的な素因も関係する可能性があります。

症状

手指の第1関節が赤く腫れて変形してきます。指先を少しぶつけただけで激痛が走ったり手を多く使うことをした後に関節がズキズキ痛んだりします。変形が進むと指を丸めて物を握る動作がしにくくなり、指がまっすぐ伸びないようになってきます。炎症が強い時には何もしていなくとも痛みを感じたり、夜寝ていて手が熱くなっているなどと訴えることもあります。また、骨が出っぱるだけでなく水ぶくれのようなもの(ミューカスシスト)ができる場合もあります。

物が握りにくい 細かい作業をすると痛む 変形や腫れが出る

自分で出来る対処法

へバーデン結節は炎症が起こって赤く腫れている時に痛みを感じるので、アイシングが効果的です。氷嚢を使って冷やしたり、冷湿布を関節に合う幅に切って巻き付けるなどのケアが効果を示すことがあります。特に手を使う仕事をした後はしっかり冷やすことで炎症を抑えて変形を進めにくくしましょう。

氷嚢で冷やす 冷湿布を使用する

また、指の側面や関節の前後を擦るようなマッサージ、前腕のストレチなどを行うことも大切です。

指の前後を擦るように優しくマッサージする 指の側面を擦るように優しくマッサージする 指を少し反らせるようにして指の筋肉をストレッチする

 

TOP
LINEでお手軽相談! LINEでお手軽相談!